愛紗です。
連日たくさんのお客さんに来ていただいております。
本当にありがとうございます♪
ここのところ、Ryzen 5 5500GT/5600GTとRyzen 5 8600Gの記事が人気です。
いま売れ筋のCPUですし当然なのかもしれませんが、ふと思ったことがあります。
Ryzen 7000シリーズはどうしたんだ?!
Amazonや価格コムのCPU売れ筋上位を見ていると、Ryzen9000シリーズ、8000シリーズ、5000シリーズが上位を占めてるんですよね。デスクトップ用に6000番台は無いのですが、7000シリーズは?! 確か、Ryzen 5 7600とか結構スペックが高かったよね?
と、
いうことで!
今回はRyzen7000シリーズ、主にRyzen 5 7600について書きたいと思います♪
あ、本記事はデスクトップPC用のCPUについてのお話です。モバイル用Ryzen7000はちょっと扱いが違いますのでご注意をお願いします。
時代の過渡期に誕生した不遇のシリーズRyzen7000
後からお話しますが、Ryzen7000シリーズは決してスペックは低いわけではありません。むしろ高性能です。でも、ちょっとリリースするタイミングが悪かったみたいで、人気、売れ行きが伸びなかったのです。
2022年秋にRyzen 5 7600X、Ryzen 7 7700X、Ryzen 9 7950Xが発売。そして、2024年1月にシリーズ最後のモデルとなるRyzen 5 7600が登場する間に10のモデルが発売になりました。
当時、Ryzen系のCPUは2016年に登場したSocket AM4が全盛の時代でしたが、2022年に新しいソケット「Socket AM5」が満を持して登場。そしてRyzen7000シリーズはこのSocket AM5を採用した初めてのCPUだったのです。
Socket AM5はそれまでのAM4と比べて、
・電源供給仕様が強化されたため性能向上が期待された
・メモリ規格はDDR5に対応し高速化が見込まれた
・PCI Express 5.0に対応した
など、飛躍的な進化を遂げたものの、
・対応するマザーボードが高くなった
・逆にAM4のマザーボードが値崩れを起こした
・構成するパーツが高価になった上に、以前のものと互換性がなかった
・急激な円安により価格がさらに高くなった
という理由から、一般的なパソコン自作勢から見ると手を出しにくいものになってしまったのです。
逆にSocket AM4を採用したRyzen5000シリーズは購入しやすい状況となり、もともと十分なスペックも兼ね備えていたことから、人気に拍車がかかったという皮肉な結果になったようです。
そして、2024/1/13に、7000シリーズの起死回生を図るため(かどうかはわかりませんが)、廉価版のRyzen 5 7600(無印)を発売。おおっ、7000シリーズの安いのが出たぞっ!と自作勢が歓喜したのも束の間、18日後の1/31にRyzen 5 8600Gが発売。この8600Gがすごかった!
・基本スペックは7600とほぼ同等!
・AMD Radeon 760Mという強力なGPUを内蔵!
・次世代AIに対応するNPUも内蔵!
・価格は7600をほぼ同じ!
何を考えてるんだAMD!!!(゚д゚;)!
その年のベストセラーになりうるRyzen 5 7600の立場が、なんと18日間で崩れ落ちてしまいました(涙)
明智光秀もびっくりだよ!!
でも、本当にそうなのでしょうか?
Ryzen 5 7600 vs Ryzen 5 8600Gの比較
ここで、令和の明智光秀・Ryzen 5 7600と豊臣秀吉・Ryzen 5 8600Gのスペックを比較してみましょう。
| 項目 | Ryzen 5 7600 | Ryzen 5 8600G |
|---|---|---|
| 世代 / アーキテクチャ | Zen 4 | Zen 4(APU / Ryzen AI 対応) |
| コア / スレッド数 | 6コア / 12スレッド | 6コア / 12スレッド |
| 最大ブーストクロック | 最大 5.1GHz | 最大 5.0GHz |
| ベースクロック | 3.8GHz | 4.3GHz |
| L2キャッシュ | 6MB | 6MB |
| L3キャッシュ | 32MB | 16MB |
| 内蔵GPU | Radeon Graphics(RDNA2ベース・性能は控えめ) | Radeon 760M(RDNA3・かなり高性能) |
| NPU(Ryzen AI) | 非搭載 | 搭載(XDNA ベース NPU) |
| 対応ソケット | Socket AM5 | Socket AM5 |
| 対応メモリ | DDR5(デュアルチャネル) | DDR5(デュアルチャネル) |
| TDP(公称) | 65W クラス | 65W クラス |
| PassMark(2025/11現在) | 27000 | 25200※ |
| 価格(2025/11現在) | 2.9万円 | 3.1万円 |
| 想定用途イメージ | グラボ前提のゲーミング・クリエイティブ向けCPU | グラボなしでもゲーム&普段使いをこなす万能APU |
| 向いている人(ざっくり) | 最初からRTXなどのdGPUを載せるつもりの人 / CPU性能重視 | グラボを買う予定がない、または当面いらない人 / iGPUとRyzen AIも試したい人 |
| ※APU(8600G)はCPUとGPUでTDPをシェアするため、CPU単体のPassMarkはやや低めに出る傾向があります。 | ||
うーむん。
こう眺めても、8600Gの化け物ぶりがよくわかります。
さらに上位であるRyzen 7 8700GというCPUもありますが、8600Gは3万円台前半で買えるという超コスパCPU。高性能の内蔵GPUを搭載しているために、グラボ無しでもある程度のゲーミングができてしまう。さらにAIにまで対応とか、これを超えるコスパCPUが今後登場するんだろうかという無双ぶりですね〜
でも、8600Gが圧勝、というわけではないようです。
次のセクションでは7600が優れている点を整理してみましょう。
Ryzen 5 7600を選んだほうがいいケースとは?
まず注目していただきたいは、CPUの処理速度を図る指標のひとつであるPassMarkの数字。これが大きければ大きいほど処理速度が速いとされています。
8600Gよりも7600の方が7%ほど大きい数字です。ベースクロックは8600Gの方が遥かに高いのに、逆転現象が起きています。これは、おそらく、
①最大ブーストクロックが7600の方が高い
②L3キャッシュの容量が7600の方が大きい
ことに由来していると思います。
このうち、①はそれほど差は出ないと思います。テクテク歩く速度は8600Gの方が速いですが、全力疾走したら7600の方がちょっとだけ速いって話です。CPUが長時間全力疾走し続けることは稀なので、体感速度にはほとんど影響しません。
でも、②はかなりのアドバンテージです。L3キャッシュはCPUのキャッシュの中で最大のキャッシュで、唯一、コア間で共有されるキャッシュ・一時保管庫なのです。
ここが大きいということは、よく使うデータをたくさん保管しておくことができ、それらは「RAMに読みにいかなくてもすぐに参照できる」ということです。しかもすべてのコアで参照できるという万能ぶり。
要するに、すべてのコアが頻繁にたくさんのデータにアクセスするような過激なプログラムを実行する場合は、圧倒的に7600の方が有利なのです。
それはどんな場合か?
さあ、ここがこの記事のキモですよ〜
L3キャッシュが大きいCPUが有利なのは、
・細かいデータに頻繁にアクセスするゲームをするとき
・画像生成AIなど生成AIの一部処理をするとき
・Pythonでのデータ処理やC++のコンパイルをするとき
・ブラウザで大量のタブを開くとき
・動画編集の一部処理を行うとき
・大容量のファイルを圧縮・解凍するとき
などです!
「あれ? そもそも7600ではゲームも生成AIも無理なんじゃ?」
( ̄ー ̄)ニヤリ
そのとおり!
だから、これらの話は
グラフィックボードを搭載することが前提の話なのです!(どーん)
まとめると、
■Ryzen 5 7600を使用した方がいい人
・RTX3060などのグラフィックボードを搭載して、
ゲームを“高設定で”遊ぶ人
Stable Diffusion、ローカルLLMなどの生成AIを使用する人
動画編集を行う人
・開発を行う人
■Ryzen 5 8600Gを使用した方がいい人
・ゲームはやるけど、グラフィックボードまでは要らない人
・グラボなしで生成AIを少し試してみたい人
・動画編集等は行うけど、普段はネットサーフィンや動画視聴で使うことが多い人
という感じになります。
なお、本当にネットサーフィンや動画視聴程度の普段使いしかしない方は、Ryzen 5 8600Gはオーバースペックなので、8500Gの方をオススメします。別記事で比較しておりますので、参照してください。

Ryzen 5 7600を使用した自作PCの構成
Ryzen 5 7600を使用した自作PCの構成については、別記事を参照してください。

これは8500Gを想定した構成ですけど、ほぼ同じで動きます。
ただし! 7600はA620のマザーボードには対応しておりませんので、注意してください!BIOS更新でも対応しません!
上の記事の通りにB650のマザーボードを購入すれば大丈夫ですが、間違ってもA620のマザボは買わないように!
愛紗の所感
私は今年の春にRyzen 5 8600Gを使ってPCを1台自作しました。とても快適ですし、とても満足しております。が、おそらく将来的にはグラフィックボードを増設すると思います。内蔵GPUの処理能力は素晴らしいですけど、生成AIを利用するにしては物足りないのです。
でも、本当にグラボを増設してしまうと、せっかくの内蔵GPUは休眠状態になります。これはちょっともったいないなって思ってしまうんですね。
当時の私は「内蔵GPU+NPU」を試してみたい一心で8600Gを選びました。そして半年間、AMUSEという画像生成AIアプリの検証も行えたため、その役割は十分果たしてはいるのですが、Ryzen 5 7600+グラフィックボードという選択肢もあったんだな〜とこの記事を書きながら思いました。
これからパソコンの自作をする方は、ご自身の使い方を十分に考えた上で、CPUを選ぶことをオススメします。
最後にちょっとした小話を。
私は、2023年に画像生成AIと出会い、グラボが無いパソコンにStable Diffusionをインストールして、1枚10分かけてイラストを描いていました(過去記事参照)。
そして、もっと速くイラストを描きたいために、パソコンの自作を決意。手探り状態で情報収集を行い、見様見真似でパソコンの1台組み上げました。Ryzen 5 5600X+RTX3060のマシンです。
それが2024年1月。奇しくも、今日話題に出てきた廉価版CPU・Ryzen 5 7600が発売になる直前だったんですね。
無垢な(?)私がパソコンを組み上げてホクホクしている裏で、そんな事件があったこと、
そして、もし私が選んだCPUが、Ryzen7000シリーズの高価なものだったらとか、そんなことを考えるとちょっと怖くなりました。
偶然なんですけど、今考えてもベストチョイスの買い物だったと思います(笑)
それでは、今日はこのへんで!

